J.G.バラード @サイコミステリーSF

バラードの探偵小説仕立てのサイコSF2作(コカイン・ナイトスーパー・カンヌ)を立て続けに読みました.

 2作品を続けて読んだことは我ながら失策でしたが,どちらも現代の資本主義社会(というか物質主義社会)の病理を鋭くえぐりこむ本格的な社会心理学SFです.仕立ては探偵小説風になっていますが,本質的には非常にハードなSF作品なので,最初の数ページで投げ出さずに,ぜひ最後まで読んでほしい作品たちです.

コカイン・ナイト

コカイン・ナイト

謎の犯罪を犯した弟を弁護するためにアマチュア探偵のまねごとをする羽目になった主人公.しかし,「捜査」を続けるうちにコスタ・デル・ソルという街に潜む狂気に気づき,やがて狂気の天才と出会うことで狂気そのものにゆっくりと呑みこまれていく…… エンディングが非常にシンボル的で印象深い作品.

スーパー・カンヌ

スーパー・カンヌ

不可解な大量心中を遂げた友人のいる街を訪れた主人公とその恋人.恋人は友人の後釜として働くうちに,主人公は友人の最後の足跡を追う間に,スーパー・カンヌ一帯を覆う「道徳的独自性」と深い関わりを持つようになっていく…… コカイン・ナイトに比べるとやや人物たちの印象が薄い点は否めないが,たいへん面白いSF作品.もちろん,最後にはあっと驚く仕掛けが待っている.