ジーリー・シリーズ読破!

5月27日から読み進めていたスティーヴン・バクスタージーリー・シリーズをようやく読破しました!

 いや,とにかくスケールがデカい! 重力定数が違う世界を描いたり,体がS物質で構成された生命体を登場させたり,ワームホールによる時間移動を本気で描写したりと,物理学の方向から世界をハードに苛め抜いた作品の連続には圧倒されます.

 時間的無限大 (ハヤカワ文庫SF)以外の作品は「滅び行く世界の美学」に包まれていて,非常に面白いです.また,時間的無限大 (ハヤカワ文庫SF)は逆に「横暴な異星人に立ち向かう人類の勇者」という古典テンプレートにのっとっていて,こちらもスカッと楽しめます.

 現在では入手困難となっている本も混じっていますが,近くの古書店・図書館などで探してみる価値があります.

虚空のリング〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

虚空のリング〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

虚空のリング〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

虚空のリング〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

太陽の中に潜って孤独に絶え続ける人類に忠実な「人間的」ロボット,「白蟻塚のように美しい」S物質の生命体たち,1000年の時を生き続けなければ果たせない使命を背負い旅立っていく宣教師の船,とハードなSF要素満載の長編.結末はいかにもバクスターらしいが,やはり面白い.作中数箇所に登場するクロスオーバー要素を楽しむために,他のジーリー・シリーズを読破してから読むことをお勧めする.

天の筏 (ハヤカワ文庫SF)

天の筏 (ハヤカワ文庫SF)

人間サイズの質量が「目に見えるほどの」万有引力を発揮するという異常な世界を描ききった怪作.もちろん,一人の若者の英雄譚として読んでも楽しめるようになっている.

時間的無限大 (ハヤカワ文庫SF)

時間的無限大 (ハヤカワ文庫SF)

巨大なワームホールを作って移動させるタイムマシンという大仰なアイデアを使いつつも,宗教的狂信に対する皮肉を忘れない辺りがニヤリとさせられる.他のジーリー・シリーズに比べると,やや仕掛けが地味*1だが,その分,冒険譚として面白い.

*1:ワームホールを使ったタイムトンネルが登場するのに地味と言うのも変な話だが,実際そうなのだ