山椒魚戦争(カレル・チャペック)

戯曲「ロボット ― R.U.R.」で「ロボット」という言葉を生み出したことで名高いカレル・チャペックチャペック年譜)の山椒魚戦争という小説を読みました。

 すごい。ただこの一言に尽きます。物語として面白いだけでなく、現代の世界が抱える悩みや問題点に対する、作者の知的な皮肉が素晴らしいエッセンスになって詰め込まれています。1936年の書という事で、多少古臭いところがあるのは否めませんが、作者のチェコ近代文学を代表する人物という評判の一部を支えている碩学ぶりだけでも感嘆に値します。この小説を書いた2年後にわずか48歳で世を去ったのが惜しまれます。その若い死は、大戦で受けた衝撃が祟ったのだとも言われています。生き延びていれば、ノーベル文学賞を受賞し、さらに面白い小説や記事をたくさん書いていただろうと思うと、胸が痛みます。

山椒魚戦争 (ハヤカワ文庫SF)

山椒魚戦争 (ハヤカワ文庫SF)